御挨拶
この度、一般社団法人日本川崎病学会理事長を拝命いたしました。2015年4月から6年間、任意団体日本川崎病学会会長に就任していた際に当時の役員から法人化を提案され、その意義について語り合い法人化へ向けた手続きを始めました。法人化への目処が立ったところで任期満了のため次期会長へと引き継ぎ、2021年12月一般社団法人日本川崎病学会が設立されました。法人化後、初代理事の方々の尽力により学会としての体制は大分整いましたが、対応すべき課題はまだ山積しています。2代目理事長としての私の責務は、残された課題に対処して学会基盤を確立し、次代の日本川崎病学会運営者に少しでも良い形でバトンを渡すことであると認識しています。このために以下の事柄に注力したいと思います。
若手川崎病研究者の参加:日本川崎病学会は臨床医、メディカルスタッフ、基礎研究者、患者さんのご家族、そして患者さんご自身に至るあらゆる領域の人々が一つの疾患について議論する他に類をみない団体です。研究会時代を含め40年以上の歴史をもつ本学会をさらに発展させるためには、柔軟な発想力・思考力をもった多種多様な若手研究者が学会活動に参加し、現在の川崎病が抱えている課題を共有して解決に向けて共に取り組んでもらえる環境の整備が重要です。このためにWebサイトやSNSなどを通して活動状況を発信すると共に、勉強会の開催やニュースレターの発行を行い“川崎病の最前線”を理解して戴く努力をします。
学会・団体間交流の推進:川崎病研究をさらに推し進めるためには、国内外の関連学会・団体との連携体制を強化することが大切でしょう。日本小児科学会をはじめ小児、成人領域の循環器、リウマチ、免疫そして感染症など幅広い学会・研究会との交流、情報交換、共同研究を目指します。さらに、日米を軸に開催されてきた国際川崎病シンポジウムに加え、現在ではアジアや欧州においても川崎病研究が活発になされるようになってきました。これらの団体とも手を組んでグローバルな川崎病研究を展開します。
症例検討重視:日本川崎病学会が主導する多施設共同研究が実を結びつつあります。系統的な川崎病研究が重要であることに疑いの余地はありませんが、その一方で、本会は症例検討を大切にしてきた伝統があります。症例の中にこそ真実があります。患者さん一人一人について充分に討論し、川崎病診療にフィードバックする機会を提供することも忘れてはならない基本姿勢と感じています。
川崎病全国調査の継続:1970年以降連綿と続いてきた川崎病全国調査は、諸般の事情により第27回調査をもって区切りがつけられました。しかし、国際的に広く認知され、数多くの新知見を発信してきたこの疫学調査の重要性が今後も変化することはありません。そこで、日本川崎病学会が調査主体となりNPO法人日本川崎病研究センターと共同して全国調査を継続することにしました。これまでのデータと比較検討できる調査を継続すると共に、時代のニーズに合った“新しい全国調査”を企画します。
川崎富作先生が逝去された時、先生の笑顔がみたくて学会場に足を運んでいた私達の心にはぽっかり穴があき、とても寂しい気持ちになりました。しかし、病因をはじめとする未解明の課題はそのまま残されています。これらの宿題を川崎先生に報告できる日まで私達は一丸となって川崎病と相対していかねばなりません。皆様の学会活動への積極的な参加をお願いいたします。
2023年9月
一般社団法人日本川崎病学会
理事長 髙橋 啓