川崎富作先生の思い出

2005年9月北里大学小児科に赴任して1年経った頃川崎先生に浅草に招待して頂きました。駒形どぜうでどじょう鍋をごちそうになり、浅草を案内して頂きました。この時に原因究明を成し遂げますと約束しましたがかないませんでした。この年から、北里大学の客員教授になって頂き毎年学生に講義して頂きました。川崎病発見の時の講義は学生達に勇気を与えてくれました。先生は、常々教科書に載っていない症例に当たったら大切にしなさい。分からないことはわからないとして、けっして既成の疾患に無理に当てはめないようにしなさいと教えてくださいました。凡庸な医者の私には難しいことです。先生の講義の時は、教室が満員になるほど学生が詰めかけ、講義終了後も川崎先生を囲んでサインをねだったり、質問したりして盛り上がりました。私の講義の時の数倍の熱心さで学生達は講義に集中していました。この講義は、私が北里を辞す2017年まで続けて頂きました。晩年は、車いすでの講義でしたが、熱心に学生達へ語りかけてくださいました。毎年の講義の後は、教室の若い先生達も一緒に会食させて頂きました。川崎先生は大好きな日本酒を片手に色々な話を私たちにして下さいました。大変、大切な話を沢山聞けて彼らの臨床、研究の上で非常に役に立ったと思います。私が主宰した川崎病学会、国際川崎病シンポジウムでも、すべての演題を熱心にお聞きになり最後まで学問に人生を捧げられていました。川崎先生が川崎病を発見して頂いたお陰で非才な私もこのミステリアスな疾患に係わることができました。ご冥福をお祈りいたします。昨年お亡くなりななられました奥様と天国で再会されていることでしょう。先生は大好きな日本酒、奥様は赤ワイン、お二人で晩酌を楽しまれていることと思います。