川崎富作先生への感謝をこめて

松原知代
Tomoyo Matsubara

獨協医科大学埼玉医療センター 教授
日本川崎病学会 運営委員
日本川崎病研究センター 理事

初めてお会いした頃の先生の口癖は「Bureaucrat(官僚主義)ではだめだ」でした。順天堂大学小児科に入局して当時の上司(山口大学名誉教授 古川漸先生)のご指導で、1986年から川崎病の臨床研究に携わり学会や厚生省班会議で「IL-2産生能、TNFαに関する研究」などを発表させて頂いた頃から、川崎先生がいつも最前列でお聞きになられていたのを思い出します。カルフォルニア大学サンディエゴ校Jane Burns先生のラボで1993年にポスドクとして留学できたのも先生からのご紹介でした。その直前にお会いした居酒屋で、「研究に頑張りなさい、Bureaucrat(官僚主義)ではだめだ」と熱く語っていらっしゃったのを昨日のことのように覚えています。当時はあまり意味がわかりませんでしたが、1998年にBurns先生達と一緒に、川崎病発見の歴史について、川崎先生および先生と当時関わっていらっしゃった先生方にインタビューさせて頂き、「川崎病」が新しい病気として認定されるまでのご苦労を伺った時に、やっと意味が理解できました。

Burns先生は学会で来日すると必ず温泉に行こうとおっしゃり、川崎先生と奥様の禮子先生と、草津温泉と会津若松にご一緒させていただきました。お嬢様のつぶらさんと年齢が同じで、禮子先生にもとても可愛がってもらいました。山口大学にいた当時、川崎先生から原因究明の手段としてSEREXを用いた研究を依頼されましたが、満足のいく結果をだせなかったことをずっと悔やんでおりました。また、近年、あまり研究ができなくなってしまったので先生にお会いするたびに、申し訳ない気持ちでいましたが、2014年の教授就任パーティにご出席下さり大変暖かいご祝辞を頂きました。本当に嬉しかったです。

私の中では、神田のあのあまりきれいではない狭い日本川崎病研究センターのお部屋に今もお座りになって患者さんからの相談を受けている先生がいらっしゃいます。先生にお会いしなかったら今の私はないと言っても過言ではありません。「医学は厳しく、医療は暖かく」という先生のお言葉を心に刻んでこれからも頑張りたいと思います。

Dr. Kawasaki in photos

2009年2月草津温泉で
2014年5月教授就任パーティで

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